事故予防のため義務化されているトラックの自動ブレーキの現状や問題点、事故は減っているか、普及はどの程度か、大型トラック自動ブレーキ普及は運送業経営者の意識次第、そしてトラック事故全体として削減するためには何が必要かをまとめました。
目次
大型トラックの自動ブレーキの現状
誰しも車を運転していると経験するのが大型トラックが自社の後ろに付かれた場合の追突される恐怖です。
大型貨物は、荷物を積載した総重量は、20tにもなります。とても乗用車が急ブレーキを踏んだ場合、それに合わせて急ブレーキで減速することは無理です。
そして、一たび追突事故になればほぼ確実に死亡事故になります。
かねてからのトラック運転手の人手不足での過労働と、トラック事業の規制緩和化での運賃の下落で、悲惨な事故は後を絶たない中、トラックなどの10t以上の大型トラックに、事故予防のため義務化されました。
衝突事故を自動的に回避してくれる自動ブレーキは、自動車事故の件数を大幅に減らしてくれると言われています。
では実際道路を走行しているトラックの自動ブレーキの現状はどうなっているでしょうか。
実際、どこまで義務化は進んでいるのでしょうか。
トラックにおける自動ブレーキ義務化についてですが、まだ、道路を走行している大型トラック全部が装着しているわけではありません。
この自動ブレーキ義務化は、2016年11月以降に製造された全ての大型トラック(総重量22トン以上のトラック)と大型トレーラー(13トン以上のトラクター)には、自動ブレーキは搭載することが義務かされました。
したがって、大型トラックの各メーカーのフルモデルチェンジ以前の旧タイプの大型車種には、自動ブレーキは未装着です。
ということで、当面は大型トラックが後方に接近してきた場合の威圧感からは逃れられない現状です。
自動ブレーキの別名は、衝突回避・被害軽減ブレーキと呼ばれ、自動的にブレーキがかかることにより、他の自動車や人や物との衝突を回避し、自動車事故の被害を軽減してくれます。
実際、この効果はかなりあると見られ、自動ブレーキを搭載した自動車の衝突事故件数は、大幅に減っているということです。
トラックの自動ブレーキの機能はかなり高く、レーダーで前方を走る車両との距離とスピードを検知し車間距離が接近しすぎると警報を鳴らします。
そして、異常接近した場合、ドライバーの操作パネルが全面赤色で警報を鳴らし最終的には、危険回避のブレーキをかけます。
また、大型トラックのオートドライブ機能も前方の車両との車間距離を一定に保ち、大型車両用に独自に設計されたもので、ほぼ追突事故はないと思われます。
当然ながら、急な割り込みをされ急ブレーキを踏まれたなどかなりのイレギュラーな状況では、大型トラックの制動性能の限界点があるのでその場合は衝突回避は無理でしょうが、通常の状況では、トラック運転手が眠気が差し虚ろになったり、わき見をしたりしても事故は回避できそうです。
大型トラックの自動ブレーキの問題点。
現状のトラックの自動ブレーキシステムは、かなり高性能であると言いましたが、それでも最終的には危険回避は、ドライバーが負うことになります。
車間距離の警報が鳴ったとき、この時点でドライバーが危険に気づき、事故を回避することができればいいのですが、警告音にドライバーが気づかないこともあります。
運転中深く寝入ってしまった場合です。今の技術ではそこまでの対応はされていません。
例えば、日野製の新型車両には、顔認識システムを搭載していて、センサーがドライバーの目線をとらえ、わき見や、ふらつきなどを検知して警報をならすシステムがありますが、まだ居眠り運転の完全な予防機能はありません。今後のメーカーの技術開発が待たれるところです。
そして、かなりシステム的に確立され安全な大型トラックのオートドライブ機構ですが、トラックの制動性能の限界をしっかり考慮され十分な車間距離で走行できますがここでも問題があります。
オートドライブは、安全意識の低めの大型トラックドライバーにとってはまどろっこしく、この機能をあっても使わないか、アクセルだけマニュアル操作で車間距離を詰めてしまうという状況では、やはり危険な状態は生まれてしまいます。
さらに、今大型トラックではほぼ全車種の大型トラックに搭載義務のある速度リミッターです。
今の、大型トラックは、この速度リミッターがあるので95km以上は出ないようになっています。
ところが、このリミッターは比較的容易に改造できます。実際には車速計測用のパルス発生器のレートを2割落とすことで117kmまで出せる改造大型トラックがかなり走っています。
同じトラックでも中型トラック(4t車と呼ばれる)とこの速度リミッターはありません。
それで、この4tトラックとの見分けがつかない一般のひとは、少し混乱するかもしれませんが、大型トラックは一般的に、後ろの車軸が2軸か、あるいは前の車軸が2軸あります。あるいは、前後両方2軸の大型トラックもあります。
この2軸のトラックが95km以上出していたらこれは違法改造車です。
現状は、ほぼ取り締まりはなされておらずかなりの改造大型トラックが高速道路を走っています。
そして、このようなトラックを運転するドライバーは安全意識も低く、自動ブレーキがあるからこれからは大型トラックも危険性がないという流れを止めてしまっている存在です。
そして、もう一点見逃せないのが、今の自動ブレーキは天候に左右されてしまうということです。
主に降雪時の運行では、現状の装置では、センサー部に雪がかかり、信号が検出不能になりこの場合、とうぜんながら自動ブレーキも動作しません。
今、新東名高速で全線3車線化を進め一番左の車線でトラックの自動運転車輛を先頭にトラックを車列で繋いで走らせる構想がありますが、やはり天候による不安定さは今後技術てきに克服すべきでしょう。
大型トラック自動ブレーキ普及は運送業経営者の意識次第。
さて、今の現状で、実際日々働いているトラックドライバーは大型トラックの自動ブレーキについてどんな思いもっているでしょうか?
当然ながら自動ブレーキ付きの車両であれば安心だと思うでしょう。
プロのトラックドライバーは仕事を始める前、自問します。一たび車両総重量20tもの大型トラックの鉄の塊で追突事故を起こせば大抵は死亡事故になり、事故を起こした運転手は事故現場で、そのまま逮捕されもう家には帰れません。
事故の瞬間から刑法の業務上過失致死の容疑者で容疑者になります。そして裁判を経て犯罪者として前科が付き交通刑務所に送られます。
だから、自動ブレーキ付き車両であればこのリスクも減らせます。
ただ実際は、多くのトラックドライバーがその思いとは裏腹に自動ブレーキ付きの新型車両には乗れていません。
大型トラックは価格が優に1000万円を超えます。通常はリースで購入する事業者が多いですがそうほいほい購入できません。
そして、少しでも安全な事業を経営者として実現したいという高い社会貢献をする人間的意識がなければやはり利益を優先に考えてしまいます。
運送事業所では、中には、走行メーターが一周回った100万キロ超のトラックを使用している経営者もいます。
そうなると、もはや、その車両のリース料や車両代金の償却は終わっているので走れば走るほど利益になります。
ただ、この旧型のトラックには安全ブレーキはついていません。
そして、故障も多く良く道路を故障でふさぎます。運転手にもしなくていい苦労が付きまといます。
ですがトラックドライバーの労働環境や交通社会の安全性向上、人の命を尊重する見地からも運送事業をされている経営者の皆さんには、可能な限りの新型車両への早期乗り換えをお願いしたいところです。
中型トラックの現状と危険性
2021年までには、継続生産車や車両総重量が3.5トンを超えるトラックも自動ブレーキが義務化される予定があります。
こちらも早急に実現したい制度です。
中型車、一般に呼ばれる4t車両は、大型車両よりも、足回りが脆弱でホイルベースの幅長さも大型車両よりも小さいのに荷台は割と大きめで積もうと思えばかなり積めてしまいます。
そのためカーブでの横転もしやすく不安定です。そんな中型車両は高速道路では120もの速度で爆走する車両もかなりあります。
規制を大型車両にとどめると結局トラック全体の事故はあまり減らないでしょう。
まとめ
今回は「大型トラックの自動ブレーキの現状と問題点と普及させるには何が必要!」というテーマでお送りいたしました。
最後までご覧いただきありがとうございました。