日本郵政グループは、全国の郵便局に配置する局員数の見直しについて、労働組合と協議に入る。全体の5%にあたる1万人の削減のリストラ案が浮上している。かんぽ生命不適切販売による収入減と、ブランドイメージ悪化による今後の収益増を急激には見込めないための財政収支改善策と見られる。日本郵政主たる収入源は先細りで、日本郵政グループの抱える三つの問題と今後の展望について解説。
目次
郵便局員1万人削減リストラ案
日本郵政グループ労働組合(JP労組)との春季労使交渉で人員の配置基準に関する協議に入る。
地域ごとに必要な人員を改めて検討する。
2021年~2023年度を対象とする次の中期経営計画の合理化対策の柱としたい考え。
日本郵政の取締役会は、2019年から非公式に郵便局のコスト削減の議論を開始。
採用抑制や、早期退職による1万人の削減案などが上がっている。
グループ全体の従業員は、民営化した2007年度から7%減に留まる現状がある。
今回の、人員の配置基準の見直しは人員削減によるリストラの意味合いがある。
日本郵政グループの収入源
日本郵政グループの収入源は従来、金融事業が収益の柱で、全国2万4千の郵便局網もかんぽ生命からの年1兆円の委託手数料で維持しています。
しかし、金融2社は、かんぽ生命不適切販売問題や低金利による運用収益収入の減少で今後も増加が見込めません。
さらに、手紙やはがきなどの郵便物は減少が続いています。デジタル化や人口減で窓口にくる客も減っています。
日本郵政グループの三つの問題
昨年からかんぽ生命不適切販売でブランドイメージが失墜した日本郵政グループですが、抱えている大きな問題が三つあります。
人員削減ができていない。
日本郵政グループは2007年に民営化して2013年に労使合意により配置基準を設けました。
保険や金融の取扱額、郵便物数といった業務量をもとに地域ごとに必要な人数をはじいています。
この基準に沿って採用計画をしています。
結果的に配置基準を決めた以降は、人員数は1%しか減っていません。
結果として現状では年間、2.6兆円の人件費がかかります。
日本郵便の2018年の従業員は、19万2889人。
持ち株会社の日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命を合わせると21万5412人。
日本郵政グループ全体の9割が日本郵便の人員です。
日本郵便が、民営化した2007年より人員削減が7%足らずなのに対し例えばNTTグループは1985年の民営化から20年間で約3分の1にあたる10万人を削減しています。
人件費削減が収益を圧迫している現状人員削減は必至です。
全国特定郵便局は聖域のまま
かんぽ生命不適切販売の責任をとり社長が交代して日本郵政の新社長に就任した増田寛也氏は、就任時も、最近も全国特定郵便局は現状を堅持する考えをくずしていません。
全国特定郵便局の郵便局長は、世襲制も多く、既得権化してかなりの政治的力を持っています。
日本最大規模の「圧力団体」です。
日本郵政の社長でも手出しできない聖域になっています。
今後も、日本郵政グループの財政を圧迫し続けるでしょう。
新規収益事業が育たない
新規収益の柱を作るため、2015年に国際物流の強化を狙って、オーストラリア物流大手のトール・ホールディングスを買収しましたが、4000億円の減損損失を計上する結果に
終わっています。
今後収益の柱は具体的に見えてきていません。
社長就任時直後に、日本郵政社長の増田寛也氏は、「M&Aを含む投資」を今後の収益の柱に考えているという構想を示しましたが、未だ具体案は出てきません。
財政ひっ迫の長期化は避けられません。つまり今後の明るい展望は全く見えてきません。
以上挙げた三つの問題を解決しなければ、かなりの困難が続くでしょう。
私たちの税金の投入みたいな事態だけは避けてもらいたいと思います。
全国郵便特定郵便局長が甘い汁を吸い続け、その結果国民の血税が使われるなどは耐え難いことだからです。
まとめ
今回は「かんぽ生命不適切販売の帳尻合わせ郵便局員削減1万人。今後の展望見えず。」というテーマでお送りしました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。