黒字リストラ拡大しています。。2019年にも好業績下で人員削減策を打ち出す企業が増えています。その理由は人件費削減と若手社員への給与の再配分での年功序列賃金体系崩壊と2025年の壁問題に即応できるデジタル時代に即した人材確保にあります。
目次
黒字リストラの拡大規模は今年は昨年の3倍もあった。
上場企業が2019年に募集した早期希望退職者は35社計1万1千人ののぼるという東京商工リサーチの調査が公表されました。
これは、2018年の企業数、人員とも3倍なる。この対象各社の57%にあたる20社が業績好調であった。
この黒字で業績好調の20社での削減人数は約9100人で全体の8割になっています。
黒字リストラの拡大が多い業種は、製薬業界が目立っています。
例えばアステラス製薬2019年の純利益が35%増えていて最終利益2222億円でのに約700人が早期退職しています。
同じく製薬会の中外製薬では、純利益27%増の最終利益924億円で早期退職応募人数は約170人でした。
製造業では、カシオ計算機が純利益13%増の924億円で160人が早期退職の応募をしています。
上場企業が2019年に募集した早期希望退職者は35社計1万1千人ののぼるという東京商工リサーチの調査
これは、2018年の企業数、人員とも3倍いなる。この対象各社の57%にあたる20社が業績好調であった。
黒字リストラの拡大のわけ、理由の一つは年功序列賃金体系崩壊
黒字リストラの拡大のわけ、理由の一つは年功序列賃金体系の見直しの一環という側面です。
年功序列の賃金体系のもとでの大企業の50~54歳で平均月給が男性の場合51万円など中高年にもっとも手厚くなっています。
これを若手に再配分する必要があるとみているからです。
つまり、黒字リストラの拡大のわけは、日本企業の誇ってきた年功序列型賃金体系の崩壊化を意味していることになります。
そして、今回の調査結果でわかるように、なぜ製薬会社が黒字リストラで際立っているかというと、製造業の中でも給与の水準の高さにあります。
日本の場合、化学系の製造業は、従来から、「合化労連」という組合連合をもち、製造業の中でも、化学・薬品系の会社は賃金が他の製造業にもよりも高いという現実があります。
そのため、従来型の、年功序列型の賃金体系において、人件費がより重たくのしかかってきている現状があることです。
黒字リストラ拡大が年功序列型賃金体系の崩壊化を意味するといいました。
それを示す例として、例えばNECは、2019年3月までの1年間で約3千人の中高年が去り、反面、「新入社員でも能力次第で年収が1千万円」を支払う制度も導入しています。
富士通もデジタル人材には最高で4千万円を支払う制度を導入しています。
功序列型賃金体系の崩壊化は、企業は競争力を維持するため急速に進められています。
黒字リストラは、30代ですら対象となりえる時代を生きる覚悟が必要
黒字リストラの拡大の理由を考えるとき、雇用形態に関して、一つの大きな流れの変化がありました。
すこし、前になりますが、時をさかのぼれば、小泉竹中改革で、派遣業法自由化などの改革がすすみ、一般労働者の派遣が解禁されました。
それが大きな流れになって、日本社会に、二極化現象がおきたり、非正規雇用の拡大を生んだりしました。
この改革の大義名分は、企業の国際競争力をつけることだと、よく、その後のテレビ出演などで、竹中平蔵氏は語っていました。
それと、同時に正社員という形も変わるという主張もしていました。
つまり正社員といえども将来的に絶対なものではない時代がくるというのが竹中氏の論でした。
ついに、そういう時代がやってきたのかもしれません。
これからの変動性と不確実性の高いIT化社会では、もはや、学びを忘れ、変動性と不確実性に順応できない社員は、30代ですら黒字リストラの対象になる時代となったかもしれないということかもしれません。
黒字リストラの拡大のわけのもう一つは、「2025年の壁」問題の対策
黒字リストラの拡大のわけのもう一つは、「2025年の壁」問題の対策に企業が対応するための避けられない対策でもあります。
経済産業省『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』が2年前に発表されました。
内容は、デジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みの重要性に言及。
もし各企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進まなければ「2025年以降
、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」という内容です。
このレポートでは、「2025年の壁」問題で、企業は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しようという試みは見られるが、実際は多くはビジネス変革につながっていないというのが現状だと指摘しています。
その原因として「老朽化や複雑化、ブラックボックス化している既存の基幹システム(レガシーシステム)」が存在していると指摘しています。
レガシーシステムに多くのコストや人的リソースが費やされることで、新しいデジタル技術などにIT予算などの資源を投資できなくなり、企業のグローバル競争力を低下させている、とも指摘。
そして、今後これらのレガシーシステムを刷新する必要があり、この刷新の波に乗り遅れた企業は多くの事業機会を失うといっています。
この「2025年問題の壁」の対策として、このようにシステム刷新には、中長期な年数と数百億円単位を大規模なコストがかかるとしています。
現状の企業経営の問題点として、数年単位で経営者が変わる場合においては、その任期においてシステム刷新後の恩恵を受けにくいこともあり、中長期視点でシステム刷新を経営判断することは難しい状況となっている、と問題点を提起しています。
「2025年問題の壁」問題の対策を実効的に進めるには、 DXの推進のため、デジタル技術の活用など「攻めのIT投資」に重点を置く必要がある。
この、「攻めのIT投資」に重点を置く方向性では、今の中高年では、デジタル技術に対応できず不要な人材となります。
一方若手を中心とした、IT技術に即応できる人材を、の確保が急務で、有能な人材であれば年収1000万円以上支払っても獲得したいということになります。
IT化という急速に進む私大の流れに、もはや中高年では、デジタル技術に対応できないという現実はだれも否定できません。
IT技術、やソフトウエアの習熟は、中高年には際立って不向きです。
黒字リストラの拡大のわけを考えると、中高年のサラリーマンにも、意識改革が必要です。
この社会でしっかり生き残るスキルをしっかり身に着け来るべき「70歳定年制」の到来に準備していく必要をいやおうなく迫られている現実が見えます。
黒字リストラ断行で、年功序列賃金体系崩壊のペースを加速させた「同一労働同一賃金制度」
前年比で3倍もの急激な黒字リストラ断行の理由は他でもありません。
年功序列賃金体系崩壊のペースを急激に加速させた理由は「同一労働同一賃金制度」です。
「同一労働同一賃金制度」はパートタイム・有期雇用については、中小企業は1年間の猶予がありますが、大企業は2020年4月より施行されます。
この法律も本来は正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すもの
でした。
非正規雇用者の待遇改善が目的ですが、企業は、非正規雇用者の待遇改善をすると人件費増という非常な重荷になります。
企業経営者は、正規雇用のリストラのペースをはやめ、早く、年功序列賃金体系を崩せる企業が生き残れると考えるのは自然なことです。
そして、企業に残れた正社員にも「年功報酬」から「実力報酬」への変化に対応しなければ今のあなたの給与水準は維持できないと考えたほうがいいと思います。
実は、安倍内閣の提唱している「正社員の副業解禁」もこの布石とみられます。
今後、正社員でも今までの給与より目減りした分は、自分で稼ごうという意味があると思います。
<あとがき>
今回は「黒字リストラ拡大の理由は、年功序列賃金体系崩壊と2025年の壁問題にある!」というテーマで、黒字リストラ拡大の理由を「年功序列」と「デジタル技術に対応不可避な社会」という切り口で説明しました。
今回の黒字リストラ拡大の遠因としては、日本の社会構造のひずみである「2025年問題」もあります。
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