クシシュトフ・ペンデレツキの音楽観、代表作、最近、手がけた映画音楽や死去の詳細です。ポーランドを代表する現代音楽の作曲家・指揮者で「広島の犠牲者に捧げる哀歌」の作曲で知られるクシシュトフ・ペンデレツキが現地時間2020年3月29日、死去しました。享年86歳。ペンデレツキさんの楽曲は映画音楽も多数手がけていました。代表作に、ウィリアム・フリードキン監督の『エクソシスト』(1973)やスタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』(1980)、デヴィッド・リンチ監督の『ワイルド・アット・ハート』(1990)、マーティン・スコセッシ監督の『シャッター アイランド』(2009)などハリウッド映画の数々でも印象的に使われてきたことで知られる。
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クシシュトフペンデレツキ死去
家族によると、ペンデレツキさんは長期にわたって重い病気と闘ってきたとのこと。死因は明かされていないが、新型コロナウイルスとは無関係だと理解されているといい、The Hollywood Reporter は介護人が新型コロナウイルスに感染した際、ペンデレツキさんも検査を受けたが、陰性だったと伝えています。
ペンデレツキさんは、弦楽合奏曲「広島の犠牲者に捧げる哀歌」を作曲したことでも有名。同楽曲はアルフォンソ・キュアロン監督の『トゥモロー・ワールド』(2006)やデヴィッド・リンチ監督のテレビドラマ「ツイン・ピークス The Return」などでも使用されている。
Krzysztof Penderecki, Polish Composer Whose Music Scored ‘The Shining’ and ‘Wild at Heart,’ Dies at
作曲家クシシュトフ・ペンデレツキの作曲手法「広島の犠牲者に捧げる哀歌」
現代ポーランドを代表する作曲者、指揮者で「広島の犠牲者に捧げる哀歌」の作曲で知られる。
ペンデレツキ氏は母国ポーランド作曲界において重要な位置を占め、国際的な評価も確立しました。
当初12音技法を用いて作曲していましたが、60年代に入り、トーンクラスターの手法(ある音から別の音までの全ての音を同時に発する)による一連の作品で世界的な評価を得ました。
その代表作が1960年に作曲された52の弦楽器のための「広島の犠牲者に捧げる哀歌」です。
Penderecki: Threnody to the Victims of Hiroshima – Urbański, FRSO
ペンデレツキ氏の初期の実験的な音楽語法は、後に三和音やユニゾンなどへの伝統回帰や、自作や他作から引用するコラージュ的手法を用いることにより変化していきました。
12音技法とは
12平均律にあるオクターヴ内の12の音を均等に使用することにより、調の束縛を離れようとする技法です。
「十二音技法」 ~悪魔の音列~ 音楽を一瞬にしてカオスにしてしまう方法解説
トーンクラスター手法
トーン・クラスター(英: tone cluster)は、ある音名から別の音名までの全ての音を同時に発する房状和音のことを指す。アメリカの作曲家ヘンリー・カウエルが用いた概念で、カウエルは当時「クラスターは2度の和音の集合」と捉えています。
【トーン・クラスターについて】解説1 構成、解説:薮田翔一
クシシュトフ・ペンデレツキの映画音楽
ペンデレツキさんの楽曲は映画音楽も多数手がけていました。
代表作に、ウィリアム・フリードキン監督の『エクソシスト』(1973)があります。
Krzysztof Penderecki – “The Exorcist” – Polymorphia (1973)
またスタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』(1980)があります。
The Shining, Polymorphia and Utrenja
さらにデヴィッド・リンチ監督の『ワイルド・アット・ハート』(1990)。
Wild at Heart – Perdita
そしてマーティン・スコセッシ監督の『シャッター アイランド』(2009)があります。
Shutter Island Soundtrack – Symphony No.3 Passacaglia – Allegro Moderato
映画『シャッター・アイランド』 予告
またアルフォンソ・キュアロン監督の『トゥモロー・ワールド』(2006)もあります。
Children of Men | An Audible Apocalypse
『トゥモロー・ワールド』予告編
そしてデヴィッド・リンチ監督のテレビドラマ「ツイン・ピークス The Return」があります。
penderecki ツイン・ピークス The Return
このようにハリウッド映画の数々でも効果的、印象的に使われてきました。
「広島の犠牲者に捧げる哀歌」はアルフォンソ・キュアロン監督の『トゥモロー・ワールド』(2006)やデヴィッド・リンチ監督のテレビドラマ「ツイン・ピークス The Return」などでも使用されている。
クシシュトフ・ペンデレツキの音楽観、代表曲、最近
クシシュトフ・ペンデレツキ氏は、創作の源泉を宗教であると明言している。
「イコン性」(聖画像・偶像など敬拝の対象)の提示とは何かを問うのが、クシシュトフ・ペンデレツキ氏の音楽です。
初期の作品、たとえば「ダビデの詩篇」の冒頭は、いきなりピアノの最低弦のトリルから始まるなど、音響の特異性をまず前面に出し、その後で宗教的なメッセージの呼びかけを行う構造は、最近作にまで共通するムードである。
Penderecki Psalmen Davids
「広島の犠牲者に捧げる哀歌」はクラスターが第一主題、衝撃を伴う特殊奏法が第二主題、といった観点で作曲されており、最終的に漸減クラスターの「終止音」で終わります。
特殊奏法をどれだけ駆使しても、その奏法群をグルーピングしたり、反復させたりといった古典的な構成を捨て去ることは初期作品においてもない。
「第一弦楽四重奏」も弦楽奏者全員に「タッピング」をおこなうという異色の冒頭が話題になったが、その後は音列の展開が行われており、伝統的な視座を失うことはない。このような創作態度のまま、新ロマン主義の時代が到来したとたん、彼の音響主義は徐々に後退し始める。
LCCE Performs Penderecki: Leaves of an Unwritten Diary, for String Quartet and Double Bass
オペラ「ルダンの悪魔」もクラスターは多いが、声楽パートはシェーンベルク以来の無調語法から一歩も外に出ず、ベルント・アロイス・ツィンマーマンのような多時間系思想もないために、はるかに音楽性がわかりやすくなりました。
その後創作の頂点と言われた「ルカ受難曲」ではクライマックスに三和音を用いたことで合唱界から好まれ、以後合唱を用いた作品が増え始める。
Penderecki : St. Luke’s Passion (Highlights) – Antoni Wit*
ショスタコーヴィチが得意とした引用による影響で、ペンデレツキは自作曲でしばしば自作や他作からの引用を行うようになったが、それ以上にペンデレツキを変えたのは音響主義の破棄と、モノディーやユニゾンの復権であった。
後年は交響曲の作曲が増えるが、その中でも目立つのは第一ヴァイオリンのユニゾンで演奏される半音階的なメロディーであり、以後の作品で使いまわされている。
音響主義を破棄して標題音楽へ後退してしまったために、ペンデレツキの中期から後期の評価は賛否両論に割れたままである。
特にオペラ作品は「ユビュ王」で初演が大失敗し酷評の嵐と化したために、オペラ創作から一時期完全に離れていた。
Penderecki King Ubu
彼が音響主義から退却した時期と、指揮者としての活動を本格化させた時期は一致する。
指揮者として多忙になってからも、ブーレーズのように創作がセミリタイヤすることはなかった。
指揮者としての活動は当然のようにスター演奏家とのかかわりが増えることとなり、結果として「三人のチェロ奏者とオーケストラのための合奏協奏曲」・「ヴァイオリン協奏曲」・「ピアノ協奏曲」などの協奏作品が70年代から増え始める。
Penderecki Concerto Grosso for 3 Violoncelli and Orchestra
Penderecki Violin Concerto No.2 ‘Metamorphosen’
Krzysztof Penderecki: Concerto per pianoforte e orchestra (2001/2002)
「オーケストラとチェロのためのソナタ」や「オーケストラとヴァイオリンのためのカプリチオ」で演奏を担ったのはジークフリート・パルムやポール・ズーコフスキーのような前衛の時代の名手であったが、近年は現代音楽と関係のないソリストを起用することが多かった。
Krzysztof Penderecki – Sonata for Cello and Orchestra
Penderecki – Capriccio for violin and orchestra (1967)
日本人の弟子は少ないが、創作の全盛期に教えを受けた者に七ツ矢博資がいる。
オーケストラの客演が非常に多く、自作の指揮を手がける傍ら、古典作品も振る指揮者であった。
また、最近は、ポーランドのオーケストラ、シンフォニア・ヴァルソヴィアの音楽監督(1997 – 2008)・芸術監督(2008 – 2020)を務めていた。
まとめ
今回は「クシシュトフペンデレツキ音楽観、代表曲、最近、映画音楽、死去詳細」というテーマでお送りしました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。