欧州やアメリカが新型コロナウイルスに感染したかどうかを調べる「抗体検査」の実施を行おうとする動きがあります。日本でも検討に入っているようです。目的は、早期の経済回復や医療現場での医療スタッフ確保です。世界各国や日本の抗体検査を新型コロナウイルス対策に導入の現状をまとめます。
目次
抗体検査の目的
コロナウィルスの感染は、気が付かないうちに感染していても、症状が軽く知らないうちに抗体を持っている人が多数いると見られています。
こうした人たちの外出制限を緩和することで経済回復につながり、医療の現場では患者に感染させられるリスクがない医療スタッフが確保できます。
抗体検査で外出規制の緩和タイミングを把握
現在は、各国の医療現場は、PCR検査が主体になっています。
患者の体内に新型コロナウイルスがいるかどうかの検査をしています。
一方、抗体検査は、感染後に、人体では、同じウィルスが侵入した場合に防御できる抗体を作ります。その抗体を調べるのが抗体検査です。
例えば、感染者の伸びがピークを迎えつつある場合、免疫を持つ人が多数確認できれば
外出規制の解除をする判断に利用できます。
世界各国の抗体検査利用の動き
英国では、自身も新型コロナウイルスに感染し回復したハンコック保健相が4月2日、「免疫証明書」の発行を検討すると表明。
これは、抗体検査で陽性反応が出た人に予防接種済みを示すような証明書を与え外出規制を外すというもの。
英国は、3月23日から厳しい外出制限をしていて、このまま、長期化すれば倒産や
失業が多発して経済困窮に陥る懸念があります。
ドイツでは、ヘルムホルツ感染研究所などが、他国に先駆け4月中に抗体検査の試行に入る予定。
5月には、1万5千人の検査を実施する見通しを立てています。
フランスも同様に、抗体検査の大規模導入を視野に入れています。
アメリカも感染者の多い東部ニューヨーク州は連邦政府と協力して抗体検査を急いでいます。
ニューヨーク州のクオモ知事は、4月10日、現時点で1日300件が検査可能で1週間後は1千件まで能力を上げられると発表。
米国立研究所(NIH)も全米最大1万人の血液サンプルを収集して抗体の有無から新型コロナウイルスの感染を調べると発表。
米食品医薬品局(FDA)は、1日、15分で抗体検査ができる簡易キットを開発するセレックス社にコロナ向けとしては、初の承認を出しています。
イタリアでは、北部州で医療従事者向けの検査を開始しました。
フィンランドでは、首都で無作為抽出した人を対象に検査を開始しています。
日本での抗体検査の現状
日本では、横浜市立大学などが、検査キットの開発を進めています。
日本医師会も10日付で抗体検査の速やかな普及に向けた要望書を厚生労働相に出しました。
ただし、PCR検査は、政府が保険適用にするなど積極的ですが抗体検査は、まだ議論が進んでいません。
抗体とは
体の中に、細菌やウィルスといった病原体が侵入したとき、それを捕捉するために働く免疫分子で、一般的に、「免疫グロブリン」と呼ばれる。
「Y字」の形をしており、二股の先端部分で病原体などを捕まえる。先端部分の構造は1000億以上あるといわれ、様々な病原体に対処できると言われている。
免疫グロブリンには、「I&A」「I&D」「I&G」「I&E」「I&M」の5種があり血液中に最も多いのが「I&G」で抗体の主力と言われる。
この「I&G」を医薬品として活用したのが「抗体医薬」とよばれる医薬品で、狙った場所に結合する性質を活用する。
Y字の先端部分の遺伝子を組み替えることで、狙った場所の働きをピンポイントで阻害できる。
関節リュウマチのような免疫異常による炎症活動を抑えたり、がん細胞が増殖する働きを阻害したりする治療薬が数多く実用化されている。
また、今回の様に治療だけでなく、検査の領域でも有効とされていて、「イムノクロマト反応」(抗原抗体反応)」と呼ばれる仕組みは、妊娠検査薬やインフルエンザウィルスの簡易検査キットにも使われている。
まとめ
今回は、「世界各国の抗体検査を新型コロナウイルス対策に導入の現状」というテーマでお送りしました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
関連記事
「アメリカで抗体検査を検討、抗体検査とPCR検査の違い、経済活動の早期回復狙う」