警察庁の有識者会議が、高齢者の事故の多発をうけて新たに「違反高齢者」に運転試験を義務付ける方針を発表しました。
目次
高齢者講習に加え過去に違反歴がある高齢ドライバーに違反高齢者に運転試験導入
警察庁の有識者会議は、現行の高齢者講習に加え、過去に一定の違反歴のある高齢ドライバーには、新たに運転試験を義務付ける案を取りまとめました。
今回の中間報告で盛り込まれた案が高齢者運転技能検査。この試験は実際に車に乗って、高齢者の運転技能の適格を検査するものです。
検査は、繰り返し受験できるが、その中で、著しく技能が不十分な場合は免許の更新を認めない方針。
違反高齢者の対象は、例えば、過去3年程度に、信号無視や大幅なスピード違反があった75歳もしくは80歳程度以上の年齢を想定している。
高齢者講習の内容は、現行このようになっているがさらに更新条件強化
それでは、現行の高齢者講習の内容を見てみましょう。
高齢者講習の高齢者とは?
「高齢者とは」の定義は、行政でも各々違っています。
運転免許更新での高齢者とは、次の2段階に分けています。
70歳から74歳までは免許更新時に、「高齢者講習」の受講が義務づけられています。
75歳以上の高齢者は、「高齢者講習」に加え「認知機能検査」を行うこととしています。
一般に「高齢者とは」というと、医療保険制度ですと、65歳~74歳が、前期高齢者、75歳以上が後期高齢者という区分けがありますが、運転免許更新時の高齢者の対象は70歳からになります。
高齢者講習の内容はどんなものか?
70歳から74歳までの場合、高齢者講習の受講のみで免許の更新ができます。
高齢者講習の内容は、2時間程度で終わります。DVD等で、交通ルールや安全運転にかんする知識を再確認し、指導員が講義をおこなうスタイルです。
また、測定機材を使い動体視力、夜間視力及び視野の測定を行います。
さらに、ドライブレコーダー等で、運転状況を記録しながら、車を運転し、記録された映像を見て、指導員からのアドバイスを受けたりします。
この高齢者講習には、おおよそ5000円程度の受講料が免許更新料とは別にかかります。
高齢者講習の認知機能検査の内容はどんなか?
先ほどの高齢者講習に加えさらに認知機能にかんする検査があります。先に認知機能検査をおこない、その後の更新手続きに違いが出てきます。
高齢者講習の認知機能検査の内容は、記憶力、判断力を試す検査です。
具体的には、三つの検査項目があります。
「時間の見当識」「てがかり再生」「時計描画」です。
まず、「時間の見当識」では、今年の年、今月の月数、今日の日にちなどが問われます。
二つ目の「てがかり再生」では、最初に複数のイラストの書かれ用紙の内容を、記憶します。そして、そのあと、簡単な数を使った作業を行い、その後で、最初に記憶したイラストの内容を質問されます。
簡単な頭を使う作業を挟むことで、一時的に頭に記憶された情報が消えないで、思い出せるかどうかを試す検査です。
そして、三つ目の「時計描画」は、白紙の用紙に時計の文字盤を描画して、指定された時刻の針を書き込みます。
この検査の結果で次の3ランクに分けます。第一分類「記憶力・判断力が低くなっている方(認知症の恐れがある方)」、第二分類「記憶力判断力が少し低くなっている方(認知機能が低下している恐れのある方)」、第三分類「記憶力。判断力に心配のない方(認知機能が低下している恐れの無い方)」に3分類します。
この検査は30分程度で費用も800円程度です。
これは、認知症検査に一般的に使われる長谷川式認知症検査の一部のようなイメージです。
高齢者講習免許更新までの認知機能検査結果による違いは?
第三分類「記憶力。判断力に心配のない方(認知機能が低下している恐れの無い方)」は、通常の2時間程度の高齢者講習で新しい免許証の交付になります。講習費用も5000円程度(交付手数料とは別)です。
第二分類「記憶力判断力が少し低くなっている方(認知機能が低下している恐れのある方)」は、おおよそ3時間の高齢者講習を受講します。費用も8000円程度と高くなります。
第三分類「記憶力。判断力に心配のない方(認知機能が低下している恐れの無い方)」の場合は、「臨時適性検査」または「主治医等の診断書」の提出が必要になり、場合によっては免許の停止または取り消しになります。
高齢者講習受講対象の高齢者による事故件数について
高齢者の事故が、最近大々的の報道され始め、かなり目立っているが実際のところはどうであろうか?
高齢者講習対象高齢ドライバーの事故率
死亡事故に至った事故の事故率を調べてみると70歳を超えたころから急激に高くなっている。例えば、75歳~79歳までの死亡事故率は、35歳~49歳の死亡事故率に比べると約2.3倍に増える。
ただし、ここで、一つ付け加えるならば、ちょうど20歳~24歳の若者運転者と同率である。
これは、意外に思われるかたも多いと思うが、若者は、スピードも出すし、運転経験も浅く事故率としては当然高いでしょう。
だが、若者の死亡事故起こす死亡事故は、ニュース性が低く報道されるとしたら、よほど特別な事故に限られます。
一方高齢者の事故は、視聴者の関心が高く報道対象になる場合が多いからであります。
さらに言えば、高齢者の起こす死亡事故発生率は、例えば、75歳~79歳のところで見てみても、最近3か年の平均は10年前の約53%に減少いわば半減しています。
高齢者講習対象高齢ドライバーの事故数
一方、高齢者講習対象高齢ドライバーの事故数となると、ドライバー全体に占める高齢者の人数は、当然高齢化の流れの中で増加しています。
2000年当時、高齢者ドライバーの比率は37%であったが、2018年には、56.6%に増えています。
したがって、高齢者の起こす事故件数も増加していて10年前と比較しても1.3倍になっています。
今後も高齢化社会でさらなる高齢化が進めば高齢者の起こす事故は増え続けると考えられるでしょう。
高齢者講習受講対象の高齢者の起こす事故はどんな原因か?
高齢者事故の原因の特徴
高齢者講習受講対象年齢のの高齢者の事故原因の特徴は、操作ミス、行動ミス、判断ミス、認知ミスが多年代よりも多くの割合を占めます。
このことは、身体的能力、脳の認知能力の低下が原因です。ブレーキとアクセルの踏み間違い、逆走などという事故原因を起こしてしまっています。
池袋の高齢者による暴走事故について
今年、2019年4月に起きた、池袋の高齢者による暴走事故は、被害が悲惨だったことと、高齢者の暴走が原因だったことで、一気に高齢者の運転する事故に対しる関心を集めました。
東京都豊島区東池袋の東京メトロ東池袋駅付近の交差点で起きたこの事故は、当時87歳の高齢ドライバーによって起こされた。
この高齢者の乗った乗用車が交差点の赤信号を無視して、横断歩道上の母子を死亡させた。
この高齢ドライバーは赤信号を2回無視しブレーキ痕もなかった。
事故直後この加害高齢ドライバーは、息子に「アクセルが戻らなくなり、人をひいた。」ど電話しているが、調査では、車に異常は発見されず運転操作ミスト断定されました。
実際は、身体能力、認知能力的にも衰えていたにも関わらず、時間に間に合わせるために、スピードを出しすぎて、操作ミスを起こし、気が動転してのノーブレーキで赤信号を自足100km/hのスピードで横断歩道上の人をひき殺したわけである。
この数日後犠牲になった幼い娘と、母親の遺族の男性が記者会見し、この無念の胸の内を述べた。多くの人から事故現場に花束がたむけられ、国民の多くの胸にこの悲惨な事故の記憶を刻み込むこととなったわけです。
高齢者講習対象の高齢者ドライバーの運転免許証自己返納の動きが加速
この事件の直後より、運転免許証の自主返納をする高齢者が急増している。事件発生後自主返納者の数は警視庁の発表では、約3万7千人に及んだといいます。
私は地方在住で、高齢者にとって車の無い暮らしは、かなり不自由を強いられるが、私のまわりでも、高齢者本人の考えでの運転免許証を返納したケース、それに加え高齢者の家族の強い勧めにより返納したケースもありました。
この流れは、これからも進むと思うが、地方の場合、高齢者の移動手段を社会的に確保すれば、地方に住む高齢者も、安心して免許証の返納が可能になると考えられます。
高齢者講習の予約がとれない問題も発生!
高齢者講習の対象年齢運転者が増え続けているなか、高齢者講習の予約がとれない問題も発生しています。
最悪のケースでは運転免許証の更新期限に間に合わないケースも発生し問題化しています。
これは、2017年の法改正による高齢者講習制度の改定により、認知症検査や高齢者運転講習を実施する民間の自動車教習所の受け入れ人数の容量が不足していためです。
実際自動車教習所は、少子高齢化で教習上の数自体も減少傾向にあり、かたや、高齢者講習の受講対象年齢の運転者は今後も増加します。
地方では、高齢者が自家用車を所有しなければ移動の手段に不自由をきたします。早急なる策が必要でしょう。
高齢者講習対象の高齢者ドライバーの増加により自動ブレーキ義務化の動きが加速
こうした、高齢者講習対象の高齢者ドライバーの増加と、悲惨な事故が多発したことで、自動ブレーキ装着義務化の流れが加速しました。
従来は、バスやトラックの大型車両に義務付けられていた自動ブレーキ搭載を、普通車にも義務化し2021年11月より採用されます。
高齢者講習対象の高齢者ドライバーの高齢者マーク表示義務について
高齢者マークについては、道路交通法に以下の条項があります。
道路交通法第七十一条の五 第2項
第八十五条第一項若しくは第二項又は第八十六条第一項若しくは第二項の規定により普通自動車を運転することができる免許(以下「普通自動車対応免許」という。)を受けた者で七十五歳以上のものは、内閣府令で定めるところにより普通自動車の前面及び後面に内閣府令で定める様式の標識を付けないで普通自動車を運転してはならない。
道路交通法第七十一条の五 第3項
普通自動車対応免許を受けた者で七十歳以上七十五歳未満のものは、加齢に伴つて生ずる身体の機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすおそれがあるときは、内閣府令で定めるところにより普通自動車の前面及び後面に内閣府令で定める様式の標識を付けて普通自動車を運転するように努めなければならない。
出典: http://elaws.e-gov.go.jp
ただし、当分のあいだ、政令により、適用しないことになっています。
(2009年4月24日、道路交通法の一部を改正する法律(平成21年法律第21号)
ただ、高齢者マークの装着者は、周りのドライバーは、通常、配慮、いたわり運転をする姿を見ます。
安全運転の確保のためには、必ず装着することをお勧めします。
逆に、周りのドライバーは、高齢者マーク装着車を見かけたら、いたわり運転を心がけましょう。高齢者と、そうでない車は、スピードのペースも全く違います。車間距離を詰めたりは厳禁です。また、停車時のドアの開閉も車間距離を十分開けて、安全を確保しましょう。
まとめ
今回は、「高齢者講習に加え違反高齢者にはさらに運転試験導入の動き」というテーマでお送りしました。
高齢者の免許更新をスムーズにするため今から脳の働きの衰えを防ぎ物忘れなどを予防する対策を取りましょう。以下の記事も確認ください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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