大企業の黒字リストラの例として関心が高い日立製作所で起きた出来事です。2018年4月に訴訟を起こした日立製作所に勤める課長職の50代男性が違法な「退職強要」を受けたなどとして、日立製作所に損害賠償を求めた訴訟の判決がでました。判決では「意思を不当に抑圧して精神的苦痛を与えるもの」として違法性を認め、慰謝料20万円の支払いを命じました。会社から退職強要、パワーハラスメント、不当査定を受けた黒字リストラの日立においての具体例の紹介と中高年の社員が「路頭に迷う悲惨」の問題点について。
目次
黒字リストラの日立の裁判判決結果
大企業の黒字リストラの例として関心が高い日立製作所で起きた出来事です。
日立製作所に勤める課長職の50代男性が違法な「退職強要」を受けたなどとして、日立製作所に272万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が3月24日、横浜地裁でありました。
判決では「意思を不当に抑圧して精神的苦痛を与えるもの」として違法性を認め、慰謝料20万円の支払いを命じました。
原告の課長職の50代男性は、1988年に入社し、2012年から横浜市内の事業所でソフトウェアの売り上げ管理などを担当していました。
2016年8~12月、事業モデルの転換と今後のキャリアについて上司と面談を8回重ねた。
上司から「能力をいかせる仕事はないとずっと言い続けている」「仕事がないのに、できないのに高い給料だけもらっているって、おかしいよね」などと言われ、退職を勧められた。
判決は上司の発言について「自尊心をことさら傷つけ、困惑させる言動」だとし、退職以外に選択肢がない印象を抱かせたと指摘。
原告が退職の意向はないと明言した後も面談を重ね、考え直すよう求めた点も問題視した。
また、原告は、退職勧奨が始まった16年度から不当に評価が下げられているとして、その影響で減額された賃金の支払いも求めていたが、判決は「相応の理由がある」などとして退けた。
原告は、判決後の記者会見で「将来が不安なのがつらい。給料や賞与を減らされている。この部分も裁判で勝ち取らないといけない」と述べ、賃金の減額分の支払いを求めて控訴する意向を示した。
被告の日立製作所は、「判決内容を精査し、今後の対応を検討する」としている。
黒字リストラの日立における具体例
課長職50代の男性原告が、会社から退職強要、パワーハラスメント、不当査定を受けた黒字リストラの日立においての具体例です。
今回の裁判の原告の課長職50代の男性の主張の詳細です。
まず、退職強要についてです。
2016年8月頃から、原告の所属していた事業所において黒字リストラが開始されました。
担当部長との個別面談が行われることになりました。
2016年末には、原告が課長として担当していた部署の仕事から外され、面談の際にも
「仕事をやりたいなら、今の課長から仕事を奪え。彼らより仕事ができることを証明しろ」
「私に君の仕事を探すミッションはない。自分で仕事を探してこい」
「課長職の仕事ぶりではない。若手、新人クラスだ」
「日立にこだわっているから答えがないのだ。制約を外せ」
「制約を外すまで面談は続ける」
などと迫ります。
この、退職の強要が違法かどうかが争点になりました。
つぎに、 パワーハラスメントについて。
2017年1月に、原告が個人加盟ユニオンに加入した以降、部長による退職強要の面談は行われなくなりました。
しかし、これにかわり、同年7月、部長より、原告に対して、執拗に業務内容についてあげつらうパワーハラスメントが行われることになりました。
例えば、他社員にも認知できる状況で公然と原告を批判したり、原告が部長の指示を受けて再報告したものに対してもアドバイスをせずに、会議の席上で公然と原告の非難するなど
他にも原告を侮辱する部長の行為がありました。
これらの行為が、厚生労働省のパワーハラスメント類型の「精神的な攻撃」に該当するもので、被告としてパワーハラスメントを防ぐ就業環境保持義務に反するものかどうかが争われました。
最後に、 不当査定です。
一時金査定及び給与査定について、従来に比べて明らかに不当な低評価を行ったというものです。
これに関しては、評価の合理性が法的に争われました。
黒字リストラの問題点
日立製作所は、利益をさらに上げる目的で、それを達成するために「黒字リストラ」を行ってきました。
従来、日本型雇用は、大企業から多くの中小零細企業に至るまで、たとえ売上の減少と赤字に苦しめられながらでも、従業員の雇用の確保を守ってきました。
いわゆる終身雇用制です。
一度雇い入れた労働者との雇用契約を遵守し、好調時に蓄えた内部留保を切り崩したり、将来の利益による返済を約束して運転資金を調達する等して、必死で経営を続けてきました。
日本においては、企業の社会的責任でもあり期待でもありました。
ところが、近年黒字リストラが横行し、企業にとって不要な人材は退社させるという流れがでてきました。
その、標的にあった社員は、抗うことも出来ずに退職をさせられているのが現実です。
今回の原告の件もその一例です。
大抵、黒字リストラの標的に挙がるのは、年齢的にも40~50代で、家族がおり子供は、高校生や大学生がいる年代で、社員としても突然のリストラはやめるにやめられない事情がある場合も多く、時に今回の日立の例の様に違法行為に及んでまで、退社を迫る例も今後も増えると思われます。
この40~50歳の年代は、家族に対する責任もありリストラを拒みます。
そこに待ち受けているのが、精神を病むまでの精神的苦痛を強いられて、結局、形の上では依願退社で、そのあとの再就職の目途がない場合も多く「路頭に迷う悲惨」さえ可能性としてあります。
また、再就職できても、もはや前の生活水準は保てません。
決して、一方的に黒字リストラを行った企業が悪いということでないけれども、このことは大きな社会問題ではないでしょうか。
まとめ
今回は、「黒字リストラ日立の裁判判決に見る問題「路頭に迷う悲惨」について」というテーマでお送りしました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。